日々たくさんの椅子やテーブルに触れる中で、「これは本当にすごい」と心から思える名作がいくつかあります。
その中でも、私がずっと惚れ込んでいるのが Vitra(ヴィトラ) の「.03(ゼロスリー)」という椅子です。見た目はとてもシンプル。けれど、一度座ると「これほど考え抜かれた椅子があるのか」と驚くはずです。今日はこの「.03」の魅力と、Vitraというブランドの背景をご紹介します!


Vitra(ヴィトラ)とは?

Vitra(ヴィトラ)は、1950年にドイツ南西部・ヴァイル=アム=ラインで誕生した家具ブランドです。
創業者はウィリー&エリカ・フェルバウム夫妻。もともとは店舗什器やショーケースの製造から始まりましたが、1953年にニューヨークを訪れた際、チャールズ&レイ・イームズ夫妻の家具に出会ったことが大きな転機となりました。

この出会いを機に、Vitraはイームズやジョージ・ネルソンの名作をヨーロッパで製造販売するライセンスを獲得し、モダンデザインの礎を築きます。その後もヴェルナー・パントン、ジャン・プルーヴェ、ジャスパー・モリソン、ヘラ・ヨンゲリウス、ブルレック兄弟など、時代を代表するデザイナーたちと協働を重ねてきました。


建築とデザインが融合する「Vitra Campus」

1981年に工場火災で施設を失ったVitraは、再建の過程で“建築とデザインの融合”を実践します。
フランク・ゲーリー、ザハ・ハディド、ヘルツォーク&ド・ムーロンらが手がけた建築群が立ち並ぶ「Vitra Campus(ヴィトラ・キャンパス)」は、いまや世界的なデザインの聖地。

中でもフランク・ゲーリー設計の「Vitra Design Museum」は、家具・建築・アートの垣根を超えたデザイン文化の発信拠点として知られています。
Vitraは単なる家具メーカーではなく、“デザインのプラットフォーム”として世界中のクリエイターに影響を与え続けています。


マールテン・ヴァン・セーヴェレンとは?

「.03(ゼロスリー)」をデザインしたのは、ベルギー出身のデザイナー、マールテン・ヴァン・セーヴェレン(Maarten Van Severen)
建築家としての背景を持ち、素材の純度や構造の美しさを追求する作風で知られます。
彼の作品は、一見するととてもミニマル。しかし、その中には座り心地や耐久性への緻密な計算が隠されています。

Vitraとのコラボレーションが始まったのは1996年。
その代表作こそが、1998年発表の「.03(ゼロスリー)」です。


「.03(ゼロスリー)」とは?──“静かな快適性”を追求した名作チェア

シンプルなのに驚くほど快適

「.03」は、一見して何の変哲もないシンプルな椅子に見えます。
しかし実際に座ると、その印象は一変します。

背もたれ内部に内蔵されたリーフスプリング(薄板バネ)が、体を預けた瞬間にわずかにしなり、自然な姿勢をサポートしてくれるのです。さらに、座面には弾力のあるポリウレタン・インテグラルフォームを採用。硬すぎず、柔らかすぎず、まるで体の一部のようにフィットします。

素材と構造の融合

脚部はアルミとスチールの異素材構成で、軽量ながら高い安定性を実現。
最大10脚までスタッキングできるため、公共空間やオフィス、教育施設などにも適しています。
カラー展開も豊富で、モノトーンから鮮やかなカラーまで多様な空間に調和します。

ミニマリズムの極致

ヴァン・セーヴェレンは「形を極限まで削ぎ落とし、残った要素に全ての力を注ぐ」ことを信条としていました。
「.03」はその思想を最も純粋に体現したプロダクトです。
見た目の静けさの裏に、人間工学と素材科学の探求が息づいています。


Vitraの哲学──“長く使い続けられるデザイン”を目指して

Vitraの理念は「長く使い続けられる美しさ」。
流行に左右されないデザインと、高い耐久性を両立することで、製品が“時間とともに価値を増す”ことを目指しています。

また、環境への配慮にも早くから取り組んでおり、再生素材の採用や製品の修理サポートなど、サステナブルなモノづくりを実践しています。
家具を単なる消費物ではなく、“文化の一部”として捉える姿勢が、多くのファンを惹きつけ続けています。

🌟私が03をおすすめする理由

パッと見たときに、「見た目が硬そう」という第一印象。でも、実際に座っていただくと皆さん口をそろえて「こんなに柔らかいんですね」と驚かれます。座面の弾力と背もたれのしなり方が絶妙で、静かな快適性”を体感できる瞬間です。シンプルな造形の中に、職人技と人間工学が隠れていることを感じていただけると思います。
個人的に03の最大の魅力は「主張しすぎないのに存在感がある」ことだと思っています。オフィスでもダイニングでも、ミーティングルームでも不思議と馴染みます。無駄のないラインとマットな質感が、インテリア全体を引き締めてくれる空間を整える引き算の美を感じさせるデザインです。
デザイン家具としては珍しく、最大10脚までスタッキングできるのも魅力です。色違いで揃えてもカワイイ!イベントやカフェなどの商業空間にも向いており、デザイン性と実用性を両立しています。「美しさ」と「使いやすさ」を天秤にかけず、どちらも大切にしているのがVitraらしいですね。是非キミドリ東京で座り心地を体験してみてください。