これは「ただの椅子」じゃない。
ハンス・J・ウェグナーがデザインした、名作中の名作。
それがPP68、別名「ラストダイニングチェア」と呼ばれる椅子です。

ウェグナーは20世紀の北欧デザインを代表する家具デザイナーで、その作品は「椅子の詩人」とも称されるほど、美しさと機能性を両立させたものばかり。
今回ご紹介するのは、彼の作品の中でも特に人気の高い、ペーパーコードを使ったダイニングチェアです。

ウェグナーは生涯で500脚以上の椅子をデザインしており、常に自分のデザインに満足することなく、改善を繰り返してきました。
ですので、このラストダイニングチェアはウェグナーが積み重ねてきた知識や経験が全て詰め込まれた椅子になっています。

この椅子の座面に使われているペーパーコードとは、紙を撚ってロープ状にしたもの。
「紙」と聞くと一見頼りなさそうに感じるかもしれませんが、実際にはとても強靭で伸縮性に富み、長時間座っても疲れにくいという特徴があります。

しかもこのペーパーコード、1脚につきおよそ100メートルもの長さを職人が1本1本手作業で編み込んで仕上げています。
機械では出せない、手仕事ならではの温もりや風合いが、椅子そのものの佇まいににじみ出ているのです。

無駄を削ぎ落としたシンプルな構造。
だけど決して冷たくはなく、木の温もりとペーパーコードの柔らかさが、暮らしの中に自然と溶け込みます。
使うほどに馴染み、経年変化も楽しめる。そんな一脚です。

リユースであるがゆえに、コンディションには個体差がありますが、それもまた一点ものの魅力として楽しんでいただければと思います。

「椅子はただの道具ではない」
そう教えてくれるような、美しいデザインと誠実なものづくり。
ぜひ一度、実際に座ってその魅力を体感していただければ嬉しいです。