脳内旅行 石川県完結編

9000円の寿司を堪能してから

夜の金沢を闊歩していた

酒に弱い俺の脳は

70%程をアルコールに支配され

静脈が心地いいリズムを刻んでいる

このままホテルに帰り

ベッドにダイブしたい気分だったが

やるべき事が残っている

明日ノドグロを釣る予定なので

調理してくれる店を探さないといけない

正直ほぼ諦めてはいる

ミッションインポッシブルだ

ハードルは高すぎる

一見さんで食材を持ち込むという離れ技を可能にできる

懐の広い店を見つけないといけない

大将とマブのダチにならないとクリアできない

最悪 スモーカー寿司職人にお願いすれば

流石にやってくれるだろう

けど避けたい

9000円やし

 

とりあえず少しアルコールを抜こう

コンビニでガス入りの水を購入し

半分を一気にのみ

喫煙所でタバコに火をつけた

「すいません タバコをもらえませんか?」

嘘やろ

石川県よ

慢性的なタバコ不足か

どうしたJT

気分は良いが

気分は悪い

不思議な感情になったが

冷静になった

 

 

「・・・・・」

 

 

フルでムシした

略してフルムシだ

俺は鳩じゃない

学習したんだ

同じ轍は踏まない

 

まだまだ吸えるタバコを揉み消し

早々にその場を離れたが

背後に気配を感じる

なんかつけられている

恐怖が襲ってくる

逃れる為に目の前にあった店に飛び込んだ

「いらっしゃいませ」

透き通るような美しい声で迎えられた

引き戸の扉を少し強引に閉め

席に着いた

店内はすこぶる狭い

コの字型のカウンターのみの店

お客さんは誰もいなかった

カウンター内には割烹着を着た女性が1人

俺は2度見した

割烹着のせいか異様な程に思える母性と

割烹着の癖に感じれる守りたくなる程の華奢さと

単純に好みな顔という

割烹着界の落合博満(3冠王)がそこにいる

大当たりである

割烹着に心奪われるのは人生初だ

彼女は営業とは思えないスマイルでこちらを見てくる

時が止まった様な錯覚に陥る

すぐに我に帰りそそくさとメニューを手に取る

ビールはもういいので

地元の酒を注文する

カウンター上段に並ぶおばんざいを適当に注文し

準備は終わる

他にお客がいないせいか

あたりさわりのない会話が弾む

彼女は洗い物等の仕事をこなしながらも

俺を気遣い間髪入れずに

会話の舵を握ってくれている

居心地が最高に良い

・・・・・・

・・・・・・

どれだけ時間が経っただろう

すでに俺はノドグロ調理の約束をこぎつけていた

ミッションインポッシブルはポッシブルに変わっていた

肩の荷が降りた安堵感と

美味い石川の酒と

懐かしい味のおばんざいで

俺はベロベロになっていた

時計に目をやると

午後の11時

この店に入り1時間は軽く経っていた

その時 割烹着が突然

「隣よろしいですか?」

きたきた

待ってました

神展開

 

キザでカッコつけがちな俺は

はやる気持ちをグッと抑え

ワンクッション入れる

彼女に対して少し斜めに向きをとり

「けど、まだ営業中でしょ?お客さん来たら困るんじゃ・・」

鬼の建前セリフを放った

「大丈夫 さっき暖簾はしまいましたから・・・

今日はもう店終いです・・・」

 

キタキタ

赤カットイン

いや金台詞だ

レインボーオーラだ

この瞬間からノドグロなんてどうでもよくなっていた

隣でお酌をしてくれる

最早店とお客との

身分不相応の垣根は

簡単に飛び越え

タメ口で談笑していた

「ねぇこの店カラオケあるの デュエットしましょう」

徐にリモコンを取り出し

曲を入れた彼女

画面に映し出された曲は

『ロンリーチャップリン』

古っ‼︎

そういえば彼女は何歳なんだろう

少しの不安と

選曲にみえるこの後のやる気を感じ

マイクを握った

見つめ合って歌った

妖艶な彼女

歳なんて関係ない

 

(ここからはあまりに官能的になるので割愛させていただきます)

・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

・・

・・・・・・

 

 

 

 

 

 

気づけば俺は

予約していた船に乗り込み

釣りに勤しんでいた

結果から言うと

ノドグロは3匹ほど釣れたが

割烹着の店には行かなかった

行く事を躊躇ったのは

野暮ったさを感じたからだ

一期一会を大事にした結果

ノドグロは港にいた野良猫に与え

初日にタバコをあげた感覚と同じになった

これが正解なんだと

自分に言い聞かせて

後ろ髪を引かれる思いが少しありながらも

家路に着いた

終焉

 

ーあとがきー

明日からの現実を受け入れる

最高のリフレッシュになりました

ありがとうございました